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2022.01.05

~データマネジメントの重要性~

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとし、ビジネスパーソンの働き方は劇的に変わりました。リモートワークを実施する企業が急増し、対面でのコミュニケーションが当たり前であった営業活動へも様々な影響がおよびました。マーケティング活動においてもリアルな展示会やセミナーができなくなったことが大きな影響といえます。当然ながら、顧客との接点にも変化が生じ、商談はオンラインが当たり前になり、コミュニケーションは電話からメールへ、イベントはリアルな展示会からウェビナーへ、顧客が問い合わせをするときはWebサイトが当たり前の方法として定着してきました(図1)。
図1 変化する顧客との接点
本コラムでは、このような変化を踏まえながら、弊社が2021年2月に実施した「BtoBマーケティングのデータ活用に関するアンケート」の結果からみえてきたことを考察していきます。

~目次~

前編
コロナ禍のマーケティング活動の変化
フィリップ・コトラーが提唱するマーケティングプロセス
マーケティングチームの評価指標
市場の把握
市場把握の方法
【事例】市場把握からターゲティングに企業データを活用

後編
マーケティングに必要な企業属性
ターゲティングの精度を高める顧客情報のリッチ化
データマネジメントの重要性
マーケティング用顧客データベース
データ活用に向けて取り組むべきこと
帝国データバンクが支援できること

BtoBマーケティングのデータ活用に関するアンケートレポート2021

コロナ禍のマーケティング活動の変化

図2 コロナ禍の活動変化
コロナ禍でマーケティング活動はどのように変化したのか、アンケートの結果をみてみます。最も多いのは、『ホームページからの問い合わせ獲得・資料請求強化』で約4割が強化したようです。
「訪問できなくなった」「オンライン商談が増えた」「リアルイベントができなくなった」などのビジネス環境が急激に変化するなか、ホームページの他、『既存顧客フォロー強化』『顧客分析』などに取り組んだ企業が多いようです(図2)。購入する側も営業訪問を受けられず、Webによる情報収集をするため、ホームページを強化することは必然性があります。また、新規開拓が難しくなったことから、既存顧客分析をしてクロスセル・アップセルを目指したり、商談に至る可能性が高い既存顧客と類似する企業の発掘に取り組んだと考えられます。
一方で「特に変化はない」が23.1%ありますが、外部環境がこれだけ変化しているにもかかわらず、打ち手を変えないのでは、時代に取り残されてしまいます。

フィリップ・コトラーが提唱するマーケティングプロセス

図3 フィリップ・コトラーが提唱するマーケティングプロセス
コラムの前提としてフィリップ・コトラーが提唱するマーケティングプロセス「R・STP・MM・I・C」に触れておきます(図3)。

戦略立案プロセスであるResearchは市場・競合・自社の観点から、マクロ環境分析やミクロ環境分析を行います。PEST分析、3C分析、SWOT分析など様々あるフレームワークを活用して、市場を把握し、自社の強みや顧客への提供価値などを分析します。次にセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)のステップは、分析結果に基づき、市場の選択や分類(=セグメンテーション)を行い、自社商品を投入するセグメントを選定(=ターゲティング)したのち、提供する商品の他社との優位性(=ポジショニング)を明確にします。

本コラムでは、BtoBマーケティングプロセスのなかで企業属性を用いる必要性が高いResearchとSTPにおけるデータ活用に焦点を当てています。

マーケティングチームの評価指標

図4 マーケティングチームの評価指標
マーケティングチームの評価指標を見てみると、トップは36.4%の『受注件数』で、『営業・インサイドセールスへ送客した見込み顧客数』が33.9%、『受注金額』が30.7%、『案件数』が29.1%と続きました。それぞれの指標が、マーケティング・営業プロセスのどこに位置するのかを見てみると、上位の評価指標は営業部門との連携が求められ、業績貢献がわかりやすい指標でした(図4)。
SFAやCRM、MA(マーケティングオートメーション)の利用が浸透し、組織体制も「マーケティング⇒インサイドセールス⇒営業⇒カスタマーサクセス」というTHE MODEL(※)の考え方に基づいて活動をする企業が増えており、一連の活動の成果がわかりやすくなっていることも要因のひとつと考えられます。

※セールスフォース・ドットコムが提唱する営業プロセスモデル
図5 評価指標の達成状況
この評価指標を達成できているかを5段階で聞いたところ、達成できているとの回答は16.8%でした(図5)。この16.8%を達成チームと定義し、取り組みの差を見たところ、達成チームが総じてデータ活用・マネジメントができていることがわかりました。

市場の把握

図6 ターゲット市場の把握
それではマーケティングプロセスにおけるデータ活用についてみていきます。まずはResearchにおける市場の把握です。達成チームは『ターゲット企業数および自社シェアを把握している』が32.6%と、未達成チームの1.7倍でした(図6)。達成チームは数字に基づいた戦略を打ち出す土台ができており、市場やシェア把握の重要性を裏付ける結果といえるのではないでしょうか。

市場把握の方法

市場の把握方法にはどのようなものがあるのか、いくつか紹介します。

●国の統計データ
国が公表する統計データ「経済センサス」をみれば業種ごとに企業数や売上金額、従業員数などがわかります。無料で情報を入手できる点は魅力ですが、あくまで統計調査であるため、個別企業がどこであるかはわからず、調査の更新も数年ごとになります。

●業界団体
業界団体が公表するデータもあります。例えば、工作機械の市場を把握したい場合、一般社団法人日本工作機械工業会が統計データを公表しており、月次で工作機械の受注、生産、販売、在庫、輸出、輸入の台数や金額のデータがあります。工作機械メーカーを顧客とする部品・素材を製造する企業、メンテナンスを行う企業にとっては重要な情報といえます。他には自動車であれば日本自動車工業会、パソコンは電子情報技術産業協会(JEITA)など様々な業界団体がとりまとめたデータがあります。月次で公表する団体も多く、知りたい業界であれば、トレンドをいち早く確認することができるため、有効でしょう。一方で業界団体があるくらい主要な商品・サービスに限られてしまう点と、やはり個別企業の詳細まではわからないことが多いです。

●調査会社やシンクタンクのレポート
また、業種で選定できない、ニッチな業界・サービスなどの場合は、調査会社、銀行やシンクタンクのレポートを利用する方法もあります。弊社でも様々な業界や企業の属性に応じたレポートをリリースしています。例えば、中国に進出している日本企業に関するレポートであれば、「中国でのビジネス支援をする」「出張ニーズを捉えたい」「中国に対応したWebサイト作成」といった企業にとってはターゲット市場となります。有料のものもありますが、目的に合うものがあれば参考にするとよいでしょう。

これらの方法によってマクロの数字を入手することは可能で、市場の把握ができます。市場全体の分母に対して、自社の顧客数が分子となり、シェアを算出することができます。分母となるターゲット市場の数も、扱う商材が大企業向けか中小企業向けかによって変わりますが、公表されている数字は2次情報であり、望み通りのセグメントによる数字があるわけではありませんので、数字の使い方や伝え方には注意が必要です。

【事例】市場把握からターゲティングに企業データを活用

図7 業種×売上セグメントの企業数ヒートマップ
BIや帳票作成などのソフトウェア提供企業が、数字に基づいた営業戦略を立てるため、企業データを活用してターゲット市場とシェアの把握に取り組んだ事例を紹介します。

<課題>
・市場におけるシェアが不明
・ターゲティングを行うための企業属性情報が不足
・攻めの分析をする上で、自社のデータだけでは限界

<効果>
・データ分析のインフラ構築
・戦略の精度が向上し、新規販売額が70%増加
・週報・売上進捗報告や取引実績情報集計の作業や数字確認のための会議がゼロになった
・社員のデータリテラシーが向上

[事例] データ分析のインフラ構築によって戦略の精度が向上し、新規販売額が70%増加

企業データを活用する以前は、「ターゲットとなる顧客の業種、地域、シェアなどが、感覚的にしか分からず、戦略を立てる上で正確な情報がない」という課題がありました。「市場規模やシェア、ホワイトスペースを定量的に把握できれば、戦略の精度を上げることができる」と考え、データ活用に取り組んだとのことです。この事例では業種と売上規模でセグメントして顧客数やターゲット企業数を把握し、どのセグメントに強みがあるかをビジュアルで把握できるようにしています(図7)。

マーケティング部門では、業種と売上規模のセグメントでヒートマップ化することで、「市場規模はどれくらいか」「ホワイトスペースはどのセグメントにありそうか」「どのセグメントの打ち手を強化するか」などの議論を進めやすくなりました。「導入企業数」「導入率」「未導入企業数」なども同様に可視化しており、どのセグメントに強いのか、弱いのかが一目で分かります。シェアが高いセグメントの未導入企業があれば、経験に基づいた適切な提案を行うことで、効果的に新規顧客の獲得が可能となります。
営業部門では、業種、売上のセグメントから特定のソリューションが未導入の企業を抽出し、ターゲットリストを作成しています。SFAに企業データを連携しているため、過去の商談履歴があれば、その内容を踏まえたアプローチも可能です。
また、企業グループ全体の導入状況から、どの未導入子会社をどのように攻めるのかといったアクションの検討にも活用しています。

営業企画部マーケティング課 貞閑洋平


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