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  • クオータ制の導入は能力ある人材の活躍につながるか~景気のミカタ~

2022.01.21

女性の管理職登用は少しずつ進展がみられますが・・・

今回の景気のミカタは、女性活躍の取り組みが従業員数101人以上の中小企業も義務化となるなか、クオータ制の導入と能力主義との関係について焦点をあてています。

女性活躍の取り組み、従業員数101人以上の中小企業も義務化へ

図表1:事業主に求められる取り組み
2022年4月1日、“働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会”の実現を目的とした改正女性活躍推進法において、行動計画の策定・届出などの対象が現在の従業員301人以上の企業から101人以上の企業へと拡大します。

特に4月以降、以下の3点の取り組みが義務化されます。
(1)自社の女性の活躍状況の把握・課題分析
(2)一般事業主行動計画の策定・届出
(3)女性活躍推進に関する情報の公開
届け出が済んでいるかどうかは、「女性の活躍推進企業データベース」 で公開されています。

(1)は自社における現在の女性の活躍状況をまずは把握しようとするものです。具体的には、勤続年数の男女差や管理職に占める女性比率などがあげられます。(2)では、(1)の分析結果に基づいて1つ以上の数値目標を定めた行動計画の策定と社内周知、都道府県労働局への届出などが必要となります。そして、(3)では、自社の取り組みや状況について1項目以上の情報を公表することなどが求められます(図表1)。
図表2:女性管理職の割合
帝国データバンクが行った「女性登用に対する企業の意識調査(2021)」(2021年8月16日公表)によると、管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は平均8.9%となり、過去最高を更新しました(図表2)。しかし、このように企業における女性登用は少しずつ進展がみられるものの、政府が掲げている「指導的地位に占める女性の割合30%」に対する目標時期は「2020年代の早期達成」へと後ろ倒しされています。帝国データバンクの調査でも「女性管理職30%」を上回っている企業は8.6%と、依然として1ケタ台にとどまっていました。

クオータ制の導入は能力ある人材の活躍につながるか

また、女性の進出が進んでいないのは政治分野も同様です。IPU(列国議員同盟)によると、各国の下院(衆議院)または一院制の国における女性議員の割合をみると、日本は9.9%で191カ国中166位(2021年1月時点)にとどまっています。

そこで、女性議員の比率を引き上げる有効な手段として注目されているのが、議員の候補者や議席の一定比率を男女それぞれに割り当てる「性別に基づくクオータ制」です。現在は、130以上の国や政党レベルで各種クオータ制が導入されて選挙が執行されています。しかしながら、クオータ制には「平等原理の侵害」や「逆差別」などの観点から、導入に反対する声も根強くあることも確かです。

先日、こうしたクオータ制の導入に対する興味深い論文[1]を読む機会がありました。この論文のポイントは、そもそも現実社会は必ずしも実力主義ではないなかで、(1)能力が低い政党幹部ほど、能力の高い候補者ではなく、能力の低い候補者を多く起用しがちであるということ。そして(2)スウェーデンでクオータ制が導入された際、「女性議員の平均能力を損なうことなく、男性議員の平均的な能力を上げ、さらに能力の低い幹部を交代させ、幹部の平均能力を引き上げた」ことが示されました。そのため、著者は、クオータ制の導入は能力の高い男女が議会で活躍する道を開くためにも有効な手段なのではないか、と主張しています。

日本においても2018年5月に「政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)」が成立し、政党と政治団体には、国と地方の議員選挙で男女の候補者が均等になるよう、女性候補者を増やす取り組みが求められています。男女比率の均等化は、より多様な視点を政策に反映させることに加え、能力ある人材が活躍するためにも重要な課題です。

この論文は政治分野を対象にしていますが、そのエッセンスは企業組織においても多くの示唆を与えているのではないでしょうか。

[1] Besley, Timothy, Olle Folke, Torsten Persson and Johanna Rickne, "Gender Quotas and the Crisis of the Mediocre Man: Theory and Evidence from Sweden," American Economic Review, Vol.107, No.8, August 2017, pp.2204-2242


(情報統括部 産業情報分析課 主席研究員 窪田剛士)

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