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  • BS・PLを組み合わせた運転資金分析・後編|財務会計のイロハのイ

2022.05.24

初心者向けシリーズ「財務会計のイロハのイ」 Vol.25

Vol.24の後編です。今回は、この運転資金分析をもう少し掘り下げて説明していきます。ビジネスモデルを念頭に置きながら是非、吟味してみてください。基本を理解しておけば、どのような分析方法が適切か、見極められるようになります。
先輩社員「今回は『必要運転資金』分析の続きになります。どのような分析値を組み合わせて行うか、覚えていますか?」

新入社員「はい。売上債権回転期間と棚卸資産回転期間を合算し、仕入債務回転期間を差し引いて求めるんでしたよね?ただ、どのように理解すればよいか、少し難しい印象です」

先輩社員「おさらいですが、これは資金繰りの構造をチェックするための考え方で、必要運転資金分析において、売上債権回転期間と棚卸資産回転期間を合算したものを『受取サイクル』、仕入債務回転期間を『支払サイクル』と呼びます。損益計算書で利益が出ていたとしても、資金繰りがショートしてしまっては、支払いを受けられなくなってしまうかもしれませんからね」

新入社員「確かに、そのような状況は避けたいですよね。必要運転資金の規模が大きすぎると、結局、立て替えているお金が大きくて、資金繰りは不利な構造にあるという事でしたよね」

先輩社員「正解です。その理解のためには、必要運転資金が大きくなってしまうシナリオを考えてみるとよいでしょう。不良在庫を大量に抱えていたり、売掛金の回収が遅ければ、短期の支払いができるか不安になりませんか?」

新入社員「そうですね。前回より少しずつ分かってきた気がします。でも・・・受取サイクルと支払サイクルを差額で求めているわけですから、仕入債務回転期間は大きい方が良い、ということになってしまいませんか?支払いが遅い会社と思われてしまいそうです。この考え方は変でしょうか?」

先輩社員「いえいえ、しっかりと理解していますよ。仕入債務回転期間は、商品や材料の仕入れに対する未払いのお金という事になります。確かに、期間が短いほど資金の活用効率が良い、または流動性が高いことを表しますし、得意先から見ればすぐ支払ってくれる方がよいでしょう。ですが、支払いを伸ばせば手元に資金が残ります。二面性がありますので、受取サイクルとのバランスを見るうえで、やはり必要運転資金の考え方が出てくるわけです」

新入社員「ほとんど在庫がなくて、売掛金もすぐ回収している、つまり受取サイクルは小さいのに、支払いが遅い会社は…。なるほど!確かに手元にお金が残る構造になりますね。この場合は、必要運転資金がマイナスになってしまうと思います」

先輩社員「前回の最後に出てきたケースですね。そうです。受取サイクルから支払サイクルを差し引いて、マイナスになった場合、それは『余剰運転資金』と呼ばれ、資金繰りの構造は余裕があると解釈できます」

新入社員「想定されるケースを思い浮かべてみると、なんだかケチだな、って思ってしまいました…」

先輩社員「気持ちは少しわかりますが、業態によっては余剰運転資金が算出されるのが当たり前のケースもありますよ。棚卸資産や売掛金が少ない、一方で仕入れはある程度まとまっている商売はなんでしょうか?」

新入社員「飲食店とかが該当しますかね。昨今の状況から、厳しいお店も少なくないですし、今度は応援したい気持ちになりました」

先輩社員「分析の鉄則ですが、結果だけを見て杓子定規に判断するのではなく、そのビジネスモデルを念頭に置きながら吟味してみてください。意外と、この運転資金分析が深いことがわかると思います」

新入社員「そうなんですね。確かに、余剰運転資金が出ていても、売上が減ってしまうとこれまでキープできていた現預金が無くなってしまって、他の支払いが難しくなることもありますよね。いろんなケースを想定しながら考えようと思います」

先輩社員「ぜひ、この運転資金分析については、覚えておいてください。基本を理解しておけば、どのような分析方法が適切か、見極められるようになります。今回の回転期間はいずれも売上の月商比を前提に話しましたが、棚卸資産や仕入債務に対しては売上原価比を用いてもう少し厳密に検証するといった考え方も存在します。さらに、売上債権や仕入債務の範囲、前受・前渡をどこまで考慮するか、などもポイントです」

新入社員「かなり深い論点だという事はわかりました…。初心者のうちは、基本的な考え方をしっかり頭にインプットしたいと思います!」

ポイントの整理

■運転資金分析は、「売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間」によって求めることができ、計算結果が負の値であれば「余剰運転資金」となり、有利な資金繰り構造と判断することができる

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