損益分岐点分析・前編|財務会計のイロハのイ
2022.06.07
今回は決算書分析でも、視点を変えて社内での戦略を練るシーン等で用いることができる『損益分岐点分析』について説明しています。
自分の会社で使われている費用が『変動費』と『固定費』どちらに当たるのかぜひ考えてみてください。
新入社員「決算書が手元にきたとき、どのように見ていけばよいか、おおむね重要ポイントはわかってきたような実感があります。手法だけ知っておくだけでも、ヒントになるかもしれません。お願いします!」
先輩社員「では、『損益分岐点』という言葉を聞いたことはありますか?」
新入社員「なんとなく耳にしたことがあります。確か、採算がとれるかどうか、という視点ですよね。マーケティングにつながっていきそうな分析でしょうか?」
先輩社員「マーケティングにとどまらず、製造にかかるコストからみていくので、もっと広く関係してくるでしょう。『損益分岐点』とは、利益がちょうどゼロ、つまり利益も出ていないが損失も出していないというポイントを言います。それを決算書から求める手法が『損益分岐点分析』ですね」
新入社員「面白そう…ですが、そんな簡単に分析できなさそうですね」
先輩社員「そうなんですよ。手法を簡単に説明すると、費用を『変動費』と『固定費』に分解して、売上との連動性を求めるようなイメージです。『変動費』は売上の増加に伴って増える費用、一方で『固定費』は売上とは関係なく一定に発生する費用、という意味です」
新入社員「『変動費』は材料費といった原価科目が思い浮かびます。売上との関連性が強いのが原価ですからね。『固定費』は家賃とかでしょうか?」
先輩社員「なかなか良い着眼点です。しっかり損益分岐点分析をするためには、各科目を『変動費』と『固定費』に分解していく作業が必須になります」
新入社員「科目の性質はなんとなくイメージできそうですが、企業によって変動費か固定費かは、少しずつ変わってくるんじゃないでしょうか?例えば、給料は固定給だけとは限りませんよね?」
先輩社員「いいポイントに気づきましたね。その通りで、企業ごとに性質が異なるケースもありますし、科目の中にも変動・固定両方の性質を含むものもあります。そのため、正確に固定費と変動費を切り分けるのは、なかなかの難題となります。ですので、この『損益分岐点分析』は主に、管理会計、つまり社内での戦略を練るシーン等で用いるとよいでしょう」
新入社員「外部の決算書の損益分岐点を求めるには、推定計算になっちゃいますね」
先輩社員「確かにそうですが、その会社のビジネスモデルなどをよく知っていれば、分析の精度を上げられるかもしれませんよ。一方で、なかなかに根気が必要な分析手法とも言えるかもしれません」
新入社員「これまでの原価、販管費と営業外損益といった切り分けとは別に、『変動費』と『固定費』という見方があるという事は覚えておこうと思います」
先輩社員「コスト削減を検討するときにも、その視点が大切です。固定費が重いと、売上が下がったときにすぐ赤字になってしまいますからね。損益分岐点の計算式等も具体的に紹介しようと思いましたが、それは次回にしましょう。ぜひ、次回までにどのような『変動費』や『固定費』があるのか、考えてみてください」
新入社員「実在企業の決算書を見ながら、自分なりにイメージしてみたいと思います!」
ポイントの整理
■損益分岐点を分析するためには、経費を売上と比例関係にあるか、という観点で「変動費」と「固定費」に分解する必要がある
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