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  • 原油価格の先行きはどうなる、企業への影響は!?~景気のミカタ~

2022.05.20

幅広い財・サービスの価格に影響を及ぼす原油価格ですが・・・

今回の景気のミカタは、ロシア・ウクライナ情勢が長期化するなかで、高水準での推移が続く原油価格の先行きを押さえるとともに、企業利益に及ぼす影響などに焦点をあてています。

上昇が続く原油価格、円安要因は2割強

図表1:原油価格の推移
世界銀行は4月26日、「一次産品市場の見通し」を発表しました[1](プレスリリースは[2])。エネルギーのうち、とりわけ北海のブレント原油価格は、ウクライナ情勢による貿易と生産の混乱により、2022年平均で前年比42.0%増の1バレル=100ドルになると見込んでいます。2023年には92ドルへと下がるとしていますが、過去5年間の平均水準である60ドルを大きく上回る見通しです。

また、日本の通関ベースでみた原油価格(CIF価格)も、2022年3月には1バレル=89.6ドルとなり、2014年11月の87ドルを上回って7年5カ月ぶりの水準に達しています(図表1)。2022年3月は前年同月(2021年3月、同60.8ドル)から61.0%上昇しました。しかし、そのうち円安要因は22%と2割あまりで、原油自体の価格上昇が78%と上昇要因の8割近くを占めています。

帝国データバンク「TDB景気動向調査」で算出している2022年4月の仕入単価DI[3]は73.2となり、横ばいを一度はさみ23カ月連続で上昇、過去最高を更新してきました(図表2)。他方で、販売単価DIも58.5と過去最高の水準となっているものの、仕入単価の上昇に販売単価の上昇が追い付いていない状況が続いています。

今後も原油価格は高水準での推移が続く見込み、企業利益への影響も大きく

図表2:仕入単価DIと販売単価DI
総務省が発表した2021年の消費者物価指数は、前年比0.2%の下落となりました。家計の主要10大費目をみると、「家具・家事用品」や「教養娯楽」など6費目が上昇、「食料」など2費目が横ばい、「交通・通信」など2費目が下落しています。

「光熱・水道」は、灯油が世界経済の回復にともなう原油需要の高まりや、産油国の協調減産を背景とした原油高によって2年ぶりに上昇しています。また「交通・通信」は5.0%減と大幅に下落しました。ガソリンが原油高の影響で物価の押し上げ要因となりましたが、大手通信事業者が始めたスマートフォン向けの低廉な料金プランが全体を大きく下押しした格好です。

また、帝国データバンクが行ったシミュレーション結果によると、2022年12月に原油価格(CIF価格)が1バレル=100ドルまで上昇した場合、燃料価格の上昇によるコスト負担の増加や家計の所得減少にともなう節約行動などにより、2022年度の民間企業の経常利益は標準的なシナリオと比較して約1.5兆円減少すると試算されています[4]。

賃金の上昇がなかなか進まないなかで、原油価格の上昇は家計負担の増大要因として作用し、消費の元手となる購買力を低下させてしまいます。そのため、資源輸入国である日本にとっては大きなマイナス材料になっているといえるでしょう。

エネルギー価格は、直近2年間で1973年の石油危機以来最大の上昇率を見せています。しかし、さらにウクライナ戦争の長期化や対ロシア制裁が強化された場合、「現在の見通しより価格はさらに上昇しかつ激しく変動する」[1]といったことも予測されています。

原油価格は、今後も高水準での推移が続きそうです。


[1] The World Bank, Commodity Markets Outlook: The Impact of the War in Ukraine on Commodity Markets, April 2022

[2] The World Bank, “Food and Energy Price Shocks from Ukraine War Could Last for Years,” April 26, 2022(世界銀行「ウクライナでの戦争による食料・エネルギー価格ショック、当分続く見込み」)

[3] 仕入(販売)単価DIは、50を上回ると仕入(販売)単価が前年同月よりも上昇、下回ると低
 下していることを表す

[4] 帝国データバンク「原油価格の上昇が経済に与える影響」(2022年1月24日発表)

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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