円安の継続で家計が年間6.3万円の負担増加!?~景気のミカタ~
2022.07.15
今回の景気のミカタは、円安の進行が家計の支出負担額を増加させると同時に、実際の為替レートと想定為替レートとの乖離が企業活動に与える悪影響について焦点をあてています。
日本円の独歩安、家計の支出負担額が6.3万円増加する可能性
米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)は、2021年11月2日~3日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で量的金融緩和政策の縮小(テーパリング)を決定し、同月から開始しました。
また、ユーロ通貨圏19カ国の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)は、2021年12月16日の理事会で2022年の年明けからのテーパリングを決定、2022年3月には緩和縮小のペースをさらに加速し、早ければ7~9月期には終了する見込みです。
一方で、日本銀行は2022年6月16日~17日に開催した金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和政策を維持することを決定しました。
このように日米欧における金融政策のスタンスが大きく異なることとなりました。その結果として、緩和政策を維持している日本円の外国為替レートが急速に円安へと進む背景になっています。直近の外国為替レートをみると、7月7日終値で1ドル=135円98銭、1ユーロ=138円35銭をつけるなど、特に3月以降の急速な円安進行が継続している状況です。
さらに米欧だけでなく、日本と貿易相手国との取引額や物価変動を加味したレートである実質実効為替レートをみると、2022年4月(60.91)は固定為替レート制度下にあった1971年8月(58.41)以来50年8カ月ぶりの円安水準まで低下していました 。
帝国データバンクで試算したところ、円安がこのペースで進むと、商品・サービス価格の上昇により家計(二人以上の勤労者世帯)の支出負担額は2022年に1世帯当たり6万3千円、高所得世帯(世帯年収1,500万円以上)で11万円、低所得世帯(世帯年収200万円未満)では3万1千円増加すると見込まれます(図表1)。円安が個人消費の下押し要因になりかねません。
想定為替レートと実勢レートの乖離、企業活動に及ぼす悪影響を懸念
想定為替レートは企業の事業計画や業績見通しの作成などに用いられるため、実勢レートとの大幅な乖離は今後の企業活動に及ぼす悪影響が懸念されます。
金融政策が為替レートによって左右されることは避けなければなりませんが、急激な為替変動にともなう備えは家計・企業・政府のいずれの立場においても考える必要があるでしょう。
(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)
景気動向調査からのお知らせ
【YouTube】TDB景気動向チャンネル
【Twitter】TDB景気動向[公式]
■景気動向調査モニターへのご協力のお願い
本コラムシリーズで紹介する景気DIや見通しは、ビジネスを展開する企業の皆さまの声の集まりです。
マスコミ各社や関連省庁など広く社会に発信しています調査結果は、国会審議等でも取り上げられ、政府や官公庁など政策立案にも生かされています。
景気動向調査に回答して、皆さまの声を日本経済に反映してみませんか?
景気動向調査のモニター登録はこちら
https://h096.tdb.co.jp/mypage/regist/bTgT3RTg3sgg3TdBF