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  • 税務会計における益金と損金|財務会計のイロハのイ

2022.11.22

初心者向けシリーズ「財務会計のイロハのイ」 Vol.37

企業会計と税務会計の目的の違いについて解説しています。その目的や考え方のズレによって生じる事例に「交際費」をあげて説明しています。交際費は支出に当たりますが、損金になるのでしょうか?
先輩社員「決算書の初心者向けのレクチャーは、主要なポイントを紹介し、おおむね一巡しました。学び始めたときに比べれば、知識も身についてきたと思いますが、実感はありますでしょうか?」

新入社員「財務諸表のそれぞれの役割と、関連性がイメージできるようになったので、当初より決算書を身近に感じるようになりました。最近は有価証券報告書を見るようにしているのですが、やはり大企業の決算書は難しいという印象です。損益計算書を見ていて『法人税等調整額』という、法人税等を加減算している科目があり、そこそこ大きい金額が出ているケースもあって気になりました」

先輩社員「それは『税効果会計』による会計処理ですが、簿記・会計の中でもハイレベルな論点になるでしょう。では、今回はそれを学ぶ大前提として、企業会計と税務会計の目的の違いについてお話ししておきましょう」

新入社員「営利を目的としたすべての会社は税務申告が必要というのはわかりますが…。会計が分かれてしまうのでしょうか?」

先輩社員「まず、会社は利益に応じた納税の義務がありますので、決算書に加えて税務申告書を作成して提出しなければなりません。税務会計の目的は、公平な課税を目的にしています。一方で、経営者や投資家にとっての会計の目的は、適正な業績の測定にあります」

新入社員「適正な業績測定を目的として決算書を作っても、それをもとに課税するだけでは、税務会計の目的がきちんと果たせない、ということでしょうか?なかなか複雑な問題ですね」

先輩社員「おおむねそのようなイメージですね。少々、専門用語も織り交ぜた説明になります。企業会計の世界では収益から費用を差し引いて利益を出しますが、税務会計の考え方は益金から損金を差し引いて課税すべき所得を導き出します。この収益と益金、また費用と損金はおおむね同じ科目を指しますが、目的や考え方により異なる科目が生じるわけです」

新入社員「どのようなケースで、考え方のズレが生じるのでしょうか?」

先輩社員「例えば、交際費が挙げられます。得意先や仕入先などの事業に関係のある相手に対する接待や贈答といったものに対する支出ですが、原則として税務上は損金として認められません。お金が余っているリッチな会社であれば、それこそたくさん交際費を支出すると税金が少なくなりますので、不公平と感じることもあるでしょう」

新入社員「そうなんですね…。でも中小企業にとっては、人的なつながりが仕事に直結していたり、結構重要な費用の一つですよね」

先輩社員「なかなか良い観点ですね。そのため、期末の資本金が1億円以下の中小企業においては、一部損金として認められるなどの一定の措置が設けられています。細かい説明は割愛しますが、このように企業規模によって税務上の扱いが異なるケースもありますので注意が必要です」

新入社員「税務の世界も奥深いですね。では、税務用に決算書をもう一つ作って、それを申告書とともに提出しているんですか?」

先輩社員「いいえ。企業会計目線で決算書を作成して、益金・損金とのズレを申告書の中で調整するようなイメージです。特に大きな会社になってくると、このズレも自ずと大きくなりますよね。ですから、上場企業などでは、ズレの調整を把握する『税効果会計』を適用しているんですよ。初心者のうちは、まずはこのような概要を認識しておけばよいでしょう」

新入社員「なんとなくですが、税務会計の考え方はつかめた気がします。決算書を与信の目線で見るときは、どのような点に注意すればよいでしょうか?」

先輩社員「申告書自体を審査のタイミングで目にする機会はそうそうないでしょうから、正直、税務会計とのズレの把握は難しいでしょう。ですが、いくつかポイントがあるので、次回紹介しましょう」

ポイントの整理

・企業会計における収益と費用は、税務会計の益金と損金に相当するが、目的の違いから、一部の費用が損金に認められない等のケースが生じる。このズレは申告書において調整し、最終的な課税所得が導き出される。

◆関連コラム

企業審査人シリーズvol.75:税務における益金・損金 ~会計と税務のズレ~
会話の中で事例として紹介した「交際費」について、もう少し具体的に知りたいという方はご確認ください。
※国税庁のタックスアンサーでもご参照いただけます
No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算

企業審査人シリーズvol.99:税効果会計の話 ~コーヒー党?紅茶党?~
「税効果会計」についての解説や、ズレに関して「一時差異」と「永久差異」という重要な概念について知りたい方にお勧めです。

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