値上げラッシュのなかで賃金上昇が景気回復のカギに~景気のミカタ~
2022.10.21
今回の景気のミカタは、物価の上昇に拍車がかかり家計の実質購買力の低下がみられるなかで、賃金の上昇が今後の景気回復のカギとなることについて焦点をあてています。
物価の上昇に賃金上昇が追いつかず、家計の実質購買力が低下
こうしたなか、10月7日に公表された事業所規模5人以上を対象とした8月度の賃金動向をみると、基本給にあたる所定内給与が前年同月比1.6%増、残業代等を表す所定外給与は同4.3%増となっていました。両者を合計した「きまって支給する給与」は同1.8%増加となっています(「毎月勤労統計調査」厚生労働省)。
一方で、2022年8月の消費者物価指数(CPI)は同3.0%上昇(総合指数)していました。2022年に入って以降、賃金の上昇が物価の上昇に追いつかない状態が続いており、家計の実質購買力の低下傾向がみられます。
国内景気は個人消費の回復が必須、賃金の上昇がカギに
今後の国内景気は、新型コロナの感染拡大にともなう社会状況から、経済活動の制限が徐々に解除され、社会全体が平時へと向かう力が景気を支える原動力になると見込まれています。DXなどデジタル需要の拡大や観光需要喚起策の実施、各種経済対策、などはプラス材料となるでしょう。
しかしながら、景気が回復軌道に乗るためには個人消費の回復が欠かせません。さらにそのためには、実質所得の増加が絶対的に必要な条件です。現状は物価が先行して上昇する一方、賃金の上昇はやや遅れています。当面は、対面型サービスを中心としたリベンジ消費などが堅調に推移すると考えられますが、現在の実質購買力低下という状況が続いた場合には、消費全体を継続的に押し上げる力にはなり得ないでしょう。
過去の物価と所得の関係性によれば、所得が上昇することなく物価が上昇を続ける、という状況は経済的に持続することができません。したがって、今後は、(1)物価・所得ともに上昇する、(2)所得が上昇せず再び消費支出を抑制する、のいずれかの状況が想定されます。経済が自律的に回復し好循環で回るためには、(1)の状況が望ましいことは言うまでもありません。個人消費はGDPの5割超を占めており、個人消費の回復なくして経済全体が自律的に回復することは起こりえないのです。今後の景気回復はまさに賃金の上昇にかかっているといえるでしょう。
[1] 帝国データバンク「『主要食品105社』価格改定動向調査(10月)」(2022年10月1日発表)
[2] 帝国データバンク「TDB景気動向調査2022年9月」(2022年10月5日発表)
(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)
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