観光産業が示すウィズコロナ時代の幕開け~景気のミカタ~
2022.11.18
今回の景気のミカタは、新型コロナウイルス禍において多大なダメージを受けた旅行・観光産業に対して、全国旅行支援の開始や水際対策の緩和などが実施されるなかで、厳しいながらも企業の景況感が大きく回復してきたことについて焦点をあてています。
2022年10月の観光DIは41.0、2019年11月以来2年11カ月ぶりの水準まで上昇
観光産業[1]の景況感を表す観光DI[2]は、2022年10月に41.0となり9月から5.5ポイント増加、2カ月連続で改善しました(図表1)。新型コロナの感染が拡大する前である2019年11月(41.0)以来2年11カ月ぶりの水準まで上昇しています。観光支援策「全国旅行支援」のスタートや水際対策の緩和などにより人流が大幅に増加し、観光産業の景況感を大きく押し上げる要因となりました。
他方で、全産業ベースの景気DI(42.6)と比較すると、観光DIは1.6ポイント低く、依然として全体を下回る状況が続いています。ただし、2021年9月に16.9ポイントあった全産業の景気DIと観光DIの格差は、1年あまりで15.3ポイント縮小してきました。
「宿泊サービス」の景気DIが53.3でトップ、「旅行代理店」などが大幅に改善
特に、改善幅が最も大きい「旅行代理店その他の予約サービス」(40.0、同17.7ポイント増)では、企業から「新型コロナ第7波が収束してきた時に全国旅行支援もあり好調」(旅行代理店)などの声も聞かれます。
その他の観光産業の企業からは、「全国旅行支援や海外の方に対する水際対策緩和の効果が大きい」(旅館)や「全国旅行支援等の施策によりレンタカー需要が増加」(自動車賃貸)など、観光支援策によるプラス効果を感じている企業は多くみられます。
ただし、11月に入ってからは新規感染者が再び増加しており、冬の観光需要への影響が懸念されます。ようやく上向き始めた観光産業へのさらなる政策的な後押しが必要となるでしょう。
[1] 観光産業は非常にすそ野が広く、特定の業種分類として表すことは困難であり、個々の産業に関する統計整備にとどまる。そこで、ここでは、UNWTO(世界観光機関、World Tourism Organization)が示している国際基準であるTSA(旅行・観光サテライト勘定、Tourism Satellite Account)において観光産業(Tourism Industries)に分類されている業種に基づき、観光産業として定義した。
[2] 観光DIは、[1]で分類した観光産業に属する企業の景気判断を総合した指標。観光DIは0~100の値をとり、50より上であれば景気が「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる。
(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)
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