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  • 日銀総裁の交代と金融緩和政策10年の評価~景気のミカタ~

2023.02.17

10年ぶりに日銀総裁が交代、これからの金融政策はどうなる!?

今回の景気のミカタは、10年におよぶ金融緩和政策を企業がどのように評価しているのか、さらに今後の金融政策の行方と中央銀行の総裁に求められるものとは何かに焦点をあてています。

10年におよぶ金融緩和政策、企業からの評価は平均65.8点

図表1
日本銀行の総裁が4月8日に任期を終え、交代します。

日本円は米ドル、ユーロとともに国際通貨の一角を占めており、通貨の番人である中央銀行の総裁が誰になるのか、世界的な関心事と言っても過言ではないでしょう。とりわけ10年におよぶ金融緩和政策が今後どうなるか、非常に注目されるところです。

デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日銀の政策連携-共同声明(アコード)が公表されてから2023年1月には10年目を迎えました。

そしてアベノミクス「三本の矢」のもと、2013年4月に異次元の「質的・量的金融緩和政策」として始まりました。物価目標2%の達成に向けて、達成期間2年を念頭におき、マネタリーベースを2倍にするという「トリプル2」と言われた政策パッケージです。

この間、2016年1月にマイナス金利操作付き質的・量的金融緩和政策の導入を決定しました。同年9月には長期金利操作付き質的・量的金融緩和政策を決定して、YCC(イールド・カーブ・コントロール)の導入やオーバーシュート型コミットメントの運用を開始。さらに2018年7月に政策金利のフォワードガイダンスを導入してきました。
そして、2022年12月、長期金利の変動幅を従来の「プラスマイナス0.25%」から「プラスマイナス0.5%」に拡大しています。

消費者物価は2022年12月に4%上昇し、41年ぶりの上げ幅となりました。しかし、当初想定していた経済の好循環によるマイルドなインフレではなく、原材料価格の上昇や円安を受けた輸入物価の高騰、コストプッシュ型の物価上昇となっており、いまだ道半ばといった状況です。

帝国データバンクが実施した調査[1]によると、企業は10年におよぶ金融緩和政策に対して100点満点中、平均65.8点という評価をしています(図表1)。点数の分布を見ると、「80~89点」が22.2%で最も高く、「70~79点」(18.1%)、「90点以上」(14.5%)、「60~69点」(13.4%)、「50~59点」(13.3%)と続いています。大規模緩和政策のスタート時の効果が評価された一方、長期化による副作用を指摘する声も多数寄せられました。

実際、「黒田総裁の金融政策がすべて良いとは思わないが、我々中小企業の事業が思ったよりも順調に推移した点は良かった」(ゴムベルト製造、90点)や「金融政策に関して出だしは良かったが、その後は金融緩和政策に固守しすぎている」(工業用プラスチック製品製造、70点)との意見が聞かれています。
また、「金融緩和を長い間続けたことで国債が増えすぎ、身動きが取れない状況。一時的なカンフル剤としての金融緩和とするべきであった」(機械器具設置工事、35点)と、副作用を指摘する声も多くありました。

中央銀行総裁に求められるものとは

図表2
2月14日、政府は新しい日銀総裁候補、および二人の副総裁候補に関する人事案を国会に提示しました。人事案通りに新総裁が決まれば、戦後初の経済学者出身となります。しかし、近年の主な先進国では、経済学者が中央銀行総裁を務める方がむしろ一般的です(図表2)。

もちろん、すべて経済学者が占めているわけではありません。現在のFRB(米連邦準備制度理事会)議長は法務博士ですが、FRBとしては40年ぶりとなるエコノミスト以外の出身です。また、ECB(欧州中央銀行)総裁は政治学を専門としていますが、前任者まではエコノミストが務めていました。

金融政策の意思決定は合議制ですが、そこでは最新のマクロ経済理論を反映した議論が行われます。また、中央銀行間でのコミュニケーションには、「経済学」といういわば共通の言語が用いられることになります。

上記の調査では、望ましい金融政策の方向性として企業の約4割が「金融緩和の縮小」をあげていました。次期総裁の人事はこれから本格化しますが、中央銀行の総裁には市場との対話の重要性も大きくなっています。衆参両議院の同意を得て、内閣によって任命される新総裁が、これまで堅持してきた金融緩和の路線を維持していくのか、修正に舵を切るのか、注目されます。


[1] 帝国データバンク「金融政策10年の評価と今後に関する企業アンケート」(2023年2月16日発表)

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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