これがパクリ屋の手口だ ~取込詐欺に遭わないために~ 第2回
2023.04.27
~休眠会社から食料品販売会社を騙ったW社のケース~
W社の概要
W社の手口
ある時、決済日に支払いが行われなかったため取引先が当社に問い合わせると、「不況の煽りを受けて業績が低迷し、メインバンクから融資を受けられませんでした。今、セーフティネット保障の審査を受けているところで承認される見通しですが、万一承認が下りなければ3か月の分割払いでもいいですか?」という回答を繰り返したといいます。
被害にあったのは東京、埼玉の企業が多かったほか、東北で開催された物産展をきっかけに東北地方南部の企業も多く含まれていました。また、W社ホームページへのアクセスによって接点を持った企業も含まれており、少なくとも20~30社が被害にあったとされており、1社あたりの焦げ付き額は200~500万円、被害総額は1億円を超えたと聞かれます。
W社の動き
その後4月15日に再度通知が届きましたが、今度は「W社の破産手続きについて、営業部長とも連絡が取れなくなったため、事後処理の依頼を受けることもできなくなりました。」というもので、W社から正式な破産手続きの依頼はなく、同社とは無関係であることを強調するものでした。
債権者の動き
債権者の声
商業登記に記載されている代表者S氏自宅の千葉県のアパートまで押しかけましたが、大家から「契約していたのは別の名義の方でした。その方も昨年秋に退去しました。Sという方がここに住んでいたことはありません。」という言葉に唖然としました。
【B社】
豊島区の事務所は、営業会社でありながら社員は常に席におり、代表だけが常に不在でした。今にして思えば違和感がありました。
【C社】
警察に被害届を出しましたが、「弁護士もアリバイ作りに利用する極めて悪質で巧妙な手口だが、詐欺事件として断定するには難しい。」と言われました。
債権者の中には訴訟に踏み切った先もありましたが、結果としてW社と連絡がつかなくなり、売掛金を回収できた企業はありませんでした。債権者の声を聞くと「あの時は少しおかしいと思ったが、そのまま取引を続けてしまった。」「最初は現金取引で信用してしまった。」など、反省の弁が多数でした。
パクリ屋の被害に遭わないためには「基本行動を忘れないこと」に尽きます。古典的なパクリ屋は商業登記から見破ることができます。また、企業の事務所を実際に訪問し、自らの目で確かめることで相手方の反応を見極めることができます。
第3回に続く
[作成者:株式会社帝国データバンク TDBカレッジ事務局]
■パクリ屋の手口 ~商業登記に表れる異常~
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