評点の見方|調査報告書から学ぶビジネス教養
2023.06.06
【サマリー欄:評点】
評点は、企業の総合的な信用度を100点満点で表す企業評価の指標です。大企業から中小企業までを同じ構成要素で評価しています。今回は、その評点について解説していきます。
評点の構成要素
1.業歴(1~5点)
事業が開始されてからの経過年数に応じて、企業運営の継続性を評価しています。
2.資本構成(0~12点)
自己資本の構成を、1,300を超える業種に細分化した同業種の統計データと比べ、評価しています。点数が高ければ財務面での安全性が高いと言えます。
3.規模(2~19点)
年商や従業員数など企業規模に関連する要素を評価しています。年商については資本構成と同様に、業種に応じた格付けを行っています。
4.損益(0~10点)
営業活動によって利益計上ができているかという視点で業績を評価しています。この評価が低い場合には、損益構造に問題があると言え、慎重に見守る必要があります。
5.資金現況(0~20点)
調査時点での売上動向や採算状況、売上債権の回収状況、支払能力、資金調達余力など、資金繰りを左右する要因を総合的に評価しています。評点の中でも最大のウエイトを占めており、非常に重要な要素です。
6.経営者(1~15点)
経営資源3要素のひとつである「ヒト」の中でも、特に重要度の高い経営者について、その経験値、経営手腕などを評価しています。
7.企業活力(4~19点)
人材の質や取引先との結びつき、営業力など、数字に表れない定性的な要素を評価しています。現地現認で行うTDBならではのノウハウが活かされており、「成長性」に関する調査スタッフの見立てもここに反映されます。点数が高ければ、今後業績を拡大していくことが期待でき、企業のポテンシャルを示していると言えます。
8.加点/減点
調査スタッフからみて、上記項目だけでは十分に反映されない要素がある場合には、当項目で評点に反映します。恣意性が入らないよう、加点・減点のそれぞれに一定の要件が用意されています。
評点の分布
評点の見方
例として、以下の2社を比較してみましょう(図1参照)。将来性が見込まれるスタートアップ企業の場合、「企業活力」が高めの点数であったとしても、業歴が浅く、決算もまだ1~2期しか経ていないため、「業歴」「資本構成」「損益」は低めの点数となります。一方で凋落傾向にある大企業の場合、「業歴」「規模」は高めの点数を維持しますが、「資金現況」「企業活力」が弱含みの点数となることがあります。
また、評点は過去からの推移が重要な意味を持ちます。同じ点数の企業でも下降トレンドにあるのか上昇トレンドにあるのかでは、対象企業の経営状態が全く異なります。評点が上下したタイミングをみて、その理由を探ることが重要です。
このように、評点はある一定時点の企業の点数ですが、評点から対象企業を判断する上では、点数そのものだけでなく、その「内訳」と「変化」に着目することで、より多くの判断材料を得ることができます。
評点の活用
①与信管理
与信管理白書2023(2023年6月 帝国データバンク)によれば、自社で格付けを運用している企業の内、73.0%もの企業が評点(調査会社評価)を格付け要素に組み込んでいることがわかっています(図2参照)。自社で収集した情報以外に評点が格付けの構成要素として多くの企業に採用されていることがわかります。
自社格付の要素として評点が採用される要因はいくつか考えられます。
・統一された基準で長年にわたって提供されている
・企業規模や業界を考慮されているため、組み込みやすい
・幅広いビジネスシーンで流通している
このほかにも、自社で収集した情報のみで格付けを作成した場合、審査部門と営業部門との間で意見の対立が生じる可能性があります。第三者機関である帝国データバンクの評価を織り交ぜることで緩衝材の役割を果たし、格付けそのものの納得性を高める狙いがあると考えられます。
②営業開拓
上述の与信管理の分野だけでなく、営業ターゲットリストを作成する際も評点を抽出条件の一つに加えるケースがあります。実際に営業アプローチをし、取引開始できないような先は事前に除外するため、一定点数以下はアプローチをしないと決めている企業もあります。
「評点」については以上となります。調査報告書の中でも、特に利活用されている評点が貴社の意思決定の一助になるように、皆様の理解が進めば幸いです。
次回は、「登記・役員・大株主」の頁から、「商業登記」について解説していきます。
[作成者:株式会社帝国データバンク TDBカレッジ事務局]