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  • ダイナミックに動く世界経済情勢、日本企業の戦略は・・・~景気のミカタ~

2023.08.25

日本企業の海外進出は中国一辺倒から分散化する動き

今回の景気のミカタは、2023年の世界経済の見通しを踏まえながら、バルチック海運指数の動きや日本企業が重視する海外進出先について焦点をあてています。

2023年の世界経済見通し、3カ月前よりわずかに上方修正

図表1
IMF(国際通貨基金)が2023年7月25日に発表した世界経済見通し(World Economic Outlook, WEO)によると、世界経済のGDP(国内総生産)成長率は2022年の推計3.5%から減速して、2023年は3.0%になると予測されています(図表1)。2023年は4月時点の予測よりも0.2ポイント上方修正されましたが、過去の水準からみると依然として低いままです。

先進国・地域では成長率が1.5%にとどまり、ユーロ圏においては1%を下回ると予測されています。具体的には、米国は消費の堅調な伸びが期待され、イタリアやスペインはサービスと観光がプラス材料として上方修正されました。一方で、製造業が低迷するドイツは下方修正となっています。

日本については、ペントアップ需要と緩和的な政策を支えとして小幅に上方修正され、1.4%のプラス成長と予測されています。この傾向はTDBマクロ経済予測モデルでも同様の結果が表れており、2023年の日本経済は1%台半ばで成長する見通しとなっています。

日本企業の海外進出の重要拠点、中国が引き続きトップも大きく低下

図表2
国際機関によるGDP見通しは、おおむね四半期に一度改定されます。しかし、もっと最新のデータから世界経済の先行きを捉えたい場合にはどうすれば良いでしょうか。このような時には、世界経済の変動や商品価格の先行きを捉える代表的な指標としてバルチック海運指数(Baltic Dry Index、以下BDI)があります。

BDIとは、英国ロンドンにあるバルチック海運取引所に、各海運会社やブローカーから提供された、1年以下の短期で契約する外航ばら積み船の運賃や用船料(船舶賃貸借料)を集計したもので、1985年1月4日を1,000として指数化しています。

BDIは貨物船の需要と供給のバランスによって決まります。需要面では、モノを運ぶ貿易量によりますが、荷物の内容が鉄鉱石や石炭など、最終財の生産に必要な原材料やエネルギーであるため、世界経済の景気変動に影響を受けることになります。

したがって、今後の経済見通しが良好であれば、最終財の増産計画が立てられ、原材料貿易が増加し、BDIは上昇する傾向があります。逆に、経済の先行きが悪くなれば減産を始めるため、貿易量は原材料から少なくなり、BDIは下落する可能性が出てくるのです。この一連の流れが、BDIが世界の貿易量と、その背後にある世界経済の変動を読み解く先行指標として注目される理由となっています。

また、BDIが低下すると将来的なGDPの低下が予測され、そのことによって長期金利の低下を招くとして、BDIは10年物米国債利回りと相関があるとも指摘されています。気になるのは、2023年に入ってからBDIの水準が前年同月をいずれも下回っていることです。

こうしたなか、帝国データバンクの調査[1]によると、日本企業が生産拠点や販売拠点として最も重視する海外進出先は、中国が依然としてトップとなっています。しかし、その割合は2019年の調査から大きく低下しました。それに対して生産拠点ではインド、販売拠点ではアメリカや台湾などの重要性が増しています。

近年、世界の貿易量の変化に大きな影響を与えているのが中国です。世界経済は中国経済の拡大と成長からこれまで利益を得ていたと言えますが、中国経済や貿易量の変調はBDIにも反映することとなるでしょう。世界経済の動向をBDIが反映し、その結果を受けて各国経済の見通しが変化します。すると自己実現的に各国の実体経済に影響を及ぼすことにつながり、再びBDIが変動することになります。

海外進出企業においては、コロナ前後に関わらずアジア諸国・地域をビジネスパートナーとして重視しています。しかし、上記調査では「中国において人件費などのコスト上昇にともない、投資環境としての優位性低下を懸念」(機械・器具卸売)や中国に対するカントリーリスクを懸念する声もあがっています。ポストコロナ時代では、「中国」を最重要拠点と認識しているものの、国内回帰や他の国・地域へ拠点が移り変わる可能性もありそうです。


[1] 帝国データバンク「海外進出企業の生産・販売拠点に関する実態調査(2023年)」(2023年7月28日発表)


(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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