全国企業倒産集計 -2023年度上半期報-
2023.10.10
4年ぶりの4000件超「増加局面」鮮明
~15年ぶりに全7業種・全9地域で前年同期を上回る~
2023年度上半期(4~9月)倒産動向
前年同期比+34.7%(前年同期3123件)
前期比+14.5%(前期3676件)
■負債総額:1兆5868億3600万円
前年同期比▲10.1%(前年同期1兆7657億9500万円))
前期比+177.0%(前期5727億9600万円)
概況・主要ポイント
り、4年ぶりに4000件を超えた。前年同期を34.7%上回るなど、増加率(年度半期ベース)は2000年度以降で最
も高くなった
■負債総額は1兆5868億3600万円(前年同期1兆7657億9500万円、10.1%減)だった。前年同期から減少したもの
の、パナソニック液晶ディスプレイ㈱やユニゾホールディングス㈱など大型倒産が相次いだこともあり、上半期と
しては10年ぶりに2年連続で1兆円を超えた
■業種別にみると、15年ぶりに全7業種で前年同期を上回った。『サービス業』(前年同期811件→1022件、26.0%
増)が最も多く、『小売業』(同559件→885件、58.3%増)は前年同期から300件を超える大幅増だった
■主因別にみると、『不況型倒産』が2000年度以降初の前年同期から4割増となった
■態様別にみると、「破産」が3959件で、前年同期を1000件以上上回った
■規模別にみると、負債「100億円以上」の倒産が10件で、大型倒産の増加が目立った
■業歴別にみると、『新興企業』が1230件で、上半期としては10年ぶり1200件を超えた
■地域別にみると、15年ぶりに全9地域で前年同期を上回った。『北海道』(前年同期96件→118件、22.9%増)、
『東北』(同147件→225件、53.1%増)、『関東』(同1167件→1552件、33.0%増)、『九州』
(同231件→358件、55.0%増)では、2019年度上半期を超えた
集計期間: 2023年4月1日~2023年9月30日
発表日: 2023年10月10日
集計対象: 負債1000万円以上法的整理による倒産
今後の見通し
2023 年度上半期(4-9月)の企業倒産は4208 件となった。前年同期(3123件)を1000件超上回り、年度上半期としては2019度年以来4年ぶりに4000件台に達した。また、2023年9月の倒産も前年同月を上回る679件が発生、21年5月以降17カ月連続で前年を上回り、年度上半期としては2 年連続の増加となった。
コロナ対策で導入された実質無利子・無担保融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済を迫られるなか、エネルギーなどの「物価高(インフレ)」、「人手不足、「事業承継」問題が中小企業の経営に影を落としている。また、足元ではコロナ禍で猶予されてきた社会保険料などの「公租公課」の取り立ても強化され、滞納分を社屋や土地など資産の差し押さえられたことで経営に行き詰まる公租公課滞納倒産も目立ってきた。
こうした四重・五重の苦境が襲い、事業継続を断念した中小企業が多く発生している。負債総額は1兆5868億3600万円となり、年度上半期としては2年連続で1兆円を突破した。
前年同期に発生した自動車部品大手「マレリHD」のような超大型倒産の発生はなかったものの、「ユニゾHD」(4月、負債1262億円)や「パナソニック液晶ディスプレイ」(9月、負債5836億円)など、負債が100億円を超える大型倒産が10件発生した。この件数は13年度上半期(15件)以来10年ぶりの水準となる。
なお、2023年1-12月の企業倒産は9月までの合計で6128件に達し、10月に2022年通年の倒産件数(6376件)を超え、2年連続の前年比増加が確実となった。
■発覚が相次ぐ「粉飾決算」コンプライアンス違反倒産も最多ペースで推移
粉飾決算で財務内容をごまかしていた中小企業の倒産が相次いでいる。架空の売り上げ計上などが発覚した「粉飾倒産」の件数は、足元で『粉飾倒産』が相次いでおり、2023年度は8月までで38件判明し、年度上半期としては4年ぶりに前年を上回った。
多額の簿外債務が発覚した「堀正工業」(東京、7月破産)や医療機器製造・販売の「白井松器械」(大阪、9月民事再生)など、10年以上の期間にわたって行ってきた粉飾決算が経営破綻直前に判明し、金融機関などの支援が得られずに倒産するケースが目立つ。粉飾倒産のほか、業法違反や脱税などを含めた不正が発覚したことで経営破綻に追い込まれた「コンプライアンス違反倒産」は、23年度は8月までに146件判明し、年度上半期として既に過去最多を更新した。
手厚い資金繰り支援が各企業に行き渡り、倒産を回避できた企業が増加したコロナ禍では、こうしたコンプライアンス違反による企業の倒産が表面化しづらい状況が続いた。しかし、こうした支援策が順次縮小・終了し、資金繰りに苦慮する企業が増えるにつれて、過去の粉飾決算といった事例が明るみに出るケースが多い。コロナ対策のゼロゼロ融資も返済が本格化するなか、粉飾決算を隠し切れなくなった企業の倒産増が顕在化する可能性がある。
■「スタートアップ」「インボイス」「中小企業版・事業再生ガイドライン」に注目
政府は9月26日、物価高対策や賃上げなどを柱とした経済対策を10月末までにまとめると表明した。なかでも物価高対策は、10月には4600品目以上の飲食料品が値上がりするほか、電気・ガス代など各種サービス価格も上がり、企業や家計の負担が一段と重くなる。2023年度上半期の「物価高倒産」は383件判明し、全倒産件数の約1割を占めるほか、前年同期(158件)の2.4倍に急増した。
国内景気は緩やかに回復しているものの、長期化する物価高の影響が及ぼす企業経営への影響は無視できなくなっている。今後しばらくは物価高の影響が続くとみられ、価格転嫁の状況とともに継続的なウォッチが必要となる。
消費税の税率や税額を請求書に記載するインボイス(適格請求書)制度が10月1日にスタートした。足元では大きな混乱は聞かれない一方で、課税事業者による免税事業者との取引打ち切りや、消費税額分の値下げを求めたりするケースが今後表面化する可能性がある。個人事業者やフリーランスなど、立場の弱い免税事業者で負担増に耐えかねた廃業や倒産の動向に注視が必要だ。
近時になって目立ってきた「スタートアップ企業」の倒産や、「中小企業版・事業再生ガイドライン」の活用状況なども、今後の倒産動向をみるうえで欠かせない視点となる。
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