インフラ料金の変動を価格転嫁する難しさ~景気のミカタ~
2023.11.17
今回の景気のミカタは、企業間の取引価格の上昇が沈静化する兆しも表れているなか、社会生活のインフラである「電気・都市ガス・水道」の価格変動を販売価格等に転嫁する難しさについて焦点をあてています。
企業間の取引価格上昇は沈静化の兆しも、品目による差異が顕著に
その内訳をみると、「電力・都市ガス・水道」は同20.0%の下落です。この品目が下落するのは4カ月連続ですが、とりわけ8月以降は2ケタ台での低下が続いています。政府は2月から電気・ガス価格激変緩和対策として、電気や都市ガスの補助金制度を実施しています。2023年10月に補助による値下げ額は半額に変更されましたが、この電力等の価格は9月(17.7%)より2.3ポイント下落幅が拡大する結果となりました。とはいえ、同品目の価格は2021年~2022年にかけて大幅に上昇を続けていたこともあり、新型コロナの期間中となる2020年平均からみて2023年10月時点においても依然として20%以上高い水準となっています。
インフラの大きな価格変動は価格転嫁の難しさを促進
しかしながら、企業にとって電気料金の上昇を販売価格やサービス価格に転嫁することはかなり困難をともないます。帝国データバンクの調査[1]によると、今年4月時点で企業の57.2%が「全く価格転嫁できていない」状況でした(図表2)。多少なりとも価格転嫁できている企業であっても、その転嫁割合を示す「価格転嫁率」は14.9%にとどまっていました。これは電気料金が100円増加した場合に14.9円しか販売価格等に反映できていないことを示しています。
企業からも、「部品や原材料の値上げ分の転嫁が目先の課題で、電力代まで手が回らない」(電気機械器具卸売)や「原材料の転嫁が精一杯。それ以上の価格改定は客足が遠のきそうで転嫁できない」(美容)といった厳しい声が聞かれていました。
特に、モノやサービスの生産において「電力・都市ガス・水道」がどのくらいのコスト負担となっているかは外部から見えにくく、そのため、価格改定に向けた交渉でも切り出すことが難しいコストとなっています。電気・ガス価格激変緩和対策による補助金制度は2024年5月検針分で終了する予定です。当面は同補助金によって抑制されると考えられますが、電気料金が再び上昇するとき、どのくらい販売価格やサービス料金へ反映することができるのか注目されます。
[1] 帝国データバンク「電気料金値上げに関する企業の実態アンケート(2023年4月)」(2023年4月18日発表)
(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)
景気動向調査からのお知らせ
【YouTube】TDB景気動向チャンネル
【Twitter】TDB景気動向[公式]
■景気動向調査モニターへのご協力のお願い
本コラムシリーズで紹介する景気DIや見通しは、ビジネスを展開する企業の皆さまの声の集まりです。
マスコミ各社や関連省庁など広く社会に発信しています調査結果は、国会審議等でも取り上げられ、政府や官公庁など政策立案にも生かされています。
景気動向調査に回答して、皆さまの声を日本経済に反映してみませんか?
景気動向調査のモニター登録はこちら
https://h096.tdb.co.jp/mypage/regist/bTgT3RTg3sgg3TdBF