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  • マイナス金利政策の解除で次なるステージに入った金融政策~景気のミカタ~

2024.03.22

日本銀行は「賃上げと物価の好循環」に至ったと判断

今回の景気のミカタは、日本銀行が2013年から続いてきた大規模金融緩和政策の終了を決定し、日本経済が新たな段階に入ったことについて焦点をあてています。

国内景気は2カ月連続で悪化

図表1
帝国データバンクが実施した「TDB景気動向調査」によると、2024年2月の国内景気は、日経平均株価が34年2カ月ぶりに史上最高値を更新するなど、金融市場において好材料の多い状況が続きました。さらに、インバウンド消費や半導体関連の設備投資需要なども景気を下支えしていたといえるでしょう。

一方で、能登半島地震による影響が北陸地方を中心に続いたほか、物価高にともなう節約志向の高まりや暖冬による季節需要の不振も加わります。さらに、自動車の生産・出荷停止なども製造から小売まで関連する業種の下押し要因となりました。

これらを背景として、国内企業による景況を総合的に表す指標である景気DIは、前月から0.3ポイント減の43.9となり、小幅ながら悪化傾向が続くこととなっていました(図表1)。

今後は、雇用情勢の逼迫を背景とした継続的な賃上げや賞与、減税などによる個人消費の行方がカギとなってきます。また企業業績の改善が進むなかで、好調なインバウンド需要や設備投資の拡大が見込まれることなどはプラス材料といえるでしょう。

こうしたなか、日本銀行は「2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断」し、2013年から続いた大規模金融緩和政策に終止符を打つ決定を行いました。

日本銀行がマイナス金利政策を解除、金融政策は正常化へ第一歩

図表2
2024年3月19日、日本銀行は金融政策決定会合においてマイナス金利政策の解除を決定しました。マイナス金利政策は2016年2月に導入され、日銀の金融緩和政策の象徴となっていました。

日銀のマイナス金利政策は、3つの階層構造方式をとっていました(図表2)。これは、金融機関が日銀に預けている当座預金口座の準備預金を基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高の3つに分け、政策金利残高に対してマイナス金利を適用するものです。

以前の当コラムで述べたように[1]、マイナス金利政策の解除は「金利のある世界」への第一歩となるでしょう。これは金融政策の正常化です。

日銀は、同時にYCC(イールド・カーブ・コントロール、長短金利操作)も撤廃しました。これまでの金融緩和政策からの出口で最も難しいとされていた措置です。しかし、日銀は2023年7月と10月の2回にわたって長期金利の変動幅を拡大しました。その結果、現在、市場で取引される長期金利(10年物国債の利回り)は、日銀の設定する変動幅の上限を下回る水準で安定しており、YCCの撤廃による市場への影響を最小限に防ぐことができています。これは日銀が異次元の金融緩和政策から脱することに成功したと言っても良いでしょう。

また、ETF(上場投資信託)の購入やJ-REIT(日本版不動産投資信託)の新規買入れも終了し、長期国債の買入れはこれまでとおおむね同程度の金額で継続することも決まりました。つまり、2013年4月から続いていた量的・質的金融緩和政策が終了したのです。

ただし、今後の動向は慎重に検証する必要があります。日銀は4月に発表する「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」まで、実体経済の状況を詳細に確認していくことになっています。また、当面は頻繁な利上げは行わず、低金利政策を維持すると予想されます。今後も金融政策への注目度は高まり続けるでしょう。


[1] 「『金利のある世界』へ意識のスイッチを切り替えるとき~景気のミカタ~」(TDBカレッジ、2024年1月26日公開)

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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