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  • 南海トラフ地震に備える企業の現状と課題~景気のミカタ~

2024.08.23

自然災害に備える企業の責任と課題とは・・・

今回の景気のミカタは、南海トラフ地震に備えた事業継続計画(BCP)の重要性や、中小企業が抱える課題、BCPの策定プロセスを通じたメリットについて焦点を当てています。

自然災害の増加と企業への影響

図表1
9月1日は防災の日です。今年で関東大震災(1923年)から101年が経ちます。私はその時代の体験はありませんが、この時期になると、書店などで震災に関する書籍や新聞記事が多く目につきます。

近年では自然災害が増えており、東日本大震災はもちろんのこと、台風の上陸回数が増えたり、その規模が大きくなったりしています。また、大雪による被害や物流の混乱、集中豪雨などの悪天候も増え、被害を受ける地域が拡大しています。

最近では、2024年8月8日16時43分ごろ、宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。同日、気象庁は初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表し、巨大地震の発生に備え、防災対策の推進地域に指定されている1都2府26県の707市町村に地震への備えを改めて確認してほしいと呼びかけました。

このような自然災害はいつ発生するか分かりません。企業活動に与える影響を考えると、ヒト・モノ・カネ・情報に対するマイナスの影響は計り知れないでしょう。それでは、企業はどれだけ"万が一"に備えているのでしょうか。

事業継続計画(BCP)の重要性と現状

図表2
帝国データバンクの調査[1]によれば、事業継続計画(BCP)に対して『策定意向あり』とした企業は50.0%で、4年ぶりに5割に達しました。そのなかで、すでに「策定している」企業の割合(以下、BCP策定率)は19.8%で、昨年の調査から1.4ポイント増え、過去最高となっています。

南海トラフ地震防災対策推進地域(内閣府)が含まれる29都府県における企業のBCP策定率をみると[2]、高知県が33.3%で最も高く、次いで静岡県(26.8%)、香川県(23.3%)が高い結果となりました。

一方で、全国平均よりも策定率が低い地域も多く、南海トラフ地震が想定される地域においても対応にバラつきがみられています。

特に中小企業でBCPの策定が進んでいない状況です。その背景には、策定には専門的な知識が必要であり、限られた人員や時間の確保が難しいことなど、そして「これまで何とかやってきた」という過去の経験に頼った意識も見受けられます。

しかし、南海トラフ地震のような大規模な自然災害が発生した場合、インフラが大きく損壊する可能性があり、過去の経験では対処できない事態に直面するでしょう。長期にわたる影響に備える必要があるのです。BCPでは、従業員の安否確認、緊急時の指揮・命令系統、情報システムのバックアップなど、詳細に決めておく必要があります。

さらに、建物の耐震補強や設備の転倒防止など、事業所の安全性を確保することも大切です。非常時に対応できる仕入先の確保や、テレワークでも業務を続けられる体制の整備も必要です。災害保険の加入も欠かせません。

近年では、自然災害だけでなく、サイバー攻撃によるシステム障害や、新型コロナウイルスのような感染症の拡大もあり、BCPの重要性が増しています。

BCPの策定においては、そのプロセス自体が非常に重要です。緊急時に何が最も大切かを見極め、優先順位をつけることで、自社の事業のなかで何が本当に大切かを再確認できます。また、BCPに基いた社内訓練を通じて従業員にもその重要性を伝えることができます。策定された計画だけでなく、BCPの策定プロセスを通じて得られる知見を大切にすることが重要です。



[1] 帝国データバンク、「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)」(2024年6月25日発表)

[2] 帝国データバンク、「事業継続計画(BCP)の策定状況(2024年)-南海トラフ地震防災対策推進地域-」(2024年8月9日発表)


(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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